進め方の地図
| 週 | やること | 仕上がるもの |
|---|---|---|
| 1週目 | 授業1: ヒアリングの型 | 自分のヒアリングシート |
| 2週目 | 授業2: 提案の型 (3案 + 理由) | 提案プレゼンの練習1回 |
| 3週目 | 授業3: 修正依頼への応え方 | 修正依頼カード5枚の回答 |
| 4〜5週目 | 案件1: パン屋のリニューアル | 納品物一式 |
| 6週目 | 案件2: 子ども食堂のサイト | 納品物一式 |
| 7〜8週目 | 案件3: バナーのシリーズ制作 + 振り返り | 納品物一式 + 3本の振り返りメモ |
授業1: ヒアリングの型 ― 聞けない人は作れない
デザインの失敗の多くは、手を動かす前 ― 聞くべきことを聞いていない段階 ― で起きています。毎回必ず聞く6項目を、自分のヒアリングシートとして持ちましょう。
| 聞くこと | 質問の例 |
|---|---|
| ① 目的 | 「これができたら、何が増えるとうれしいですか? (来店・予約・寄付など)」 |
| ② 相手 | 「一番来てほしいのは、どんな人ですか?」 |
| ③ 雰囲気 | 「お店を3つの言葉で表すと? 逆に『こう見られたくない』は?」 |
| ④ 必須要素 | 「必ず入れたい文字・写真・ロゴはありますか?」 |
| ⑤ 好みの見本 | 「いいなと思う他のお店のサイトやチラシはありますか?」 |
| ⑥ 締切と形式 | 「いつまでに、どんな形 (サイズ・枚数) で必要ですか?」 |
- シートを写す上の6項目を、Figmaか紙に自分のヒアリングシートとして写します。
- 店長役をお願いするスタッフに「パン屋の店長役」をお願いします (この後の案件1の予行です)。スタッフの都合がつかない日は、AIに「架空のパン屋の店長として答えて」と頼む方法もあります。
- 15分聞くシートの順に質問し、答えをそのまま書き込みます。きれいにまとめようとせず、相手の言葉のまま書くのがコツです。
- 最後に要約を返す「つまり、◯◯な人に◯◯してもらうための、◯◯な雰囲気のデザイン、で合っていますか?」と確認します。この一言で、勘違いの9割は防げます。
授業2: 提案の型 ― 3案 + 理由
プロの提案の定番は「方向性の違う3案」です。1案だけだと、お客さんは良し悪しを判断できません。3案あると「Bの色でAの構図」のような対話が生まれます。そして発表は、いつもの型 ―「目的 → 案 → 理由」― で話します。
- 軸を決めるヒアリングの「雰囲気」の答えから、振り幅を作ります。例:「暖かい」が注文なら、A案 = 王道の暖かさ (暖色 + 丸み)、B案 = 素朴さ寄り (生成り色 + 手書き風)、C案 = 上質さ寄り (深い茶 + 明朝体)。
- ラフは小さく3枚1案を作りこまず、それぞれ30分のラフで止めます。提案段階の作りこみは、外れたとき全部無駄になります。
- 理由を1行ずつ添える「B案は『安っぽく見られたくない』の答えとして、余白を多めに取りました」のように、ヒアリングの言葉と結びつけます。
- 聞かれる前に弱点も言う「C案は上質に見えますが、親しみは少し下がります」。正直な提案は、それだけで信頼されます。
お題: 授業1の15分ヒアリングの結果から、3案のラフを作り、店長役のスタッフに5分で提案します。1案を選んでもらうところまでがゴールです。
授業3: 修正依頼 ― 曖昧な言葉を翻訳する
納品前には、ほぼ必ず修正依頼が来ます。そして依頼の言葉は、たいてい曖昧です。ジュニアの腕の見せどころは、曖昧な言葉をデザインの選択肢に翻訳して返すことです。言われたまま直すのでも、不機嫌になるのでもありません。
| お客さんの言葉 | 翻訳して返す例 |
|---|---|
| 「もっと目立たせて」 | 「大きくする・色を強くする・まわりの余白を増やす、の3つの目立たせ方があります。今回は余白案が崩れにくいですが、見比べますか?」 |
| 「なんか寂しい」 | 「写真を1点足す案と、色数はそのままで濃淡を強める案を作ってみます」 |
| 「お任せします」 | 「では、最初の目的 (予約を増やす) に一番効く案にします。理由もあとで説明しますね」 |
お題: 自分の過去の作品 (ユニット3の美容室カンプなど) を1つ選び、次の5枚の修正依頼が来たと想定して、それぞれ「翻訳 + 直し案」を作ります。直しは実際に手を動かします。
- カード①「文字が読みにくい気がする」― まずコントラスト検査をします。合格なら、次はサイズと行間を疑います。検査 → 仮説 → 直しの順です。
- カード②「もっと高級感を」― 高級の定番翻訳は「余白を増やす・色数を減らす・明朝体・細い線」です。2つだけ選んで適用します。
- カード③「全部目立たせて」― そのままやると全部沈みます。「一番大事なのはどれですか?」と優先順位を聞き返すのが正解です。聞き返す台本を書きましょう。
- カード④「ピンクをもっと増やして」― 言われたままがほぼ正解のカードです。ただし70 : 25 : 5が崩れない範囲で増やし、崩れる場合は代案を添えます。
- カード⑤「前の方が良かった」― 戻すのは負けではありません。Figmaのバージョン履歴から前の版を呼び出して、両方並べて選んでもらいます。履歴の開き方 (ファイル名横のメニュー → Show version history) も練習しましょう。
架空案件3本 ― ヒアリングから納品まで
ここからが本番です。3本とも、流れは同じです ― ①ヒアリング (15分) → ②3案ラフ提案 → ③選ばれた案を制作 → ④修正依頼に1回対応 → ⑤納品 (ファイル一式 + ひとこと説明)。スタッフ役の人には、案件ごとに1回は曖昧な修正依頼を出してもらいましょう。
設定: おなじみのパンの森が、新作食パンの予約を増やしたいと相談に来ました。納品物はA4チラシ1枚とSNS用正方形画像1枚です。授業1〜3の例題がそのまま予行になっているので、流れに乗るだけで完走できます。
- ヒアリング授業1の例題の記入例を、そのまま今回の答えとして使ってOKです。
- 3案ラフ → 提案授業2の例題の3方向 (王道・素朴・上質) で作ります。
- 制作 → 修正対応 → 納品選ばれた案を仕上げ、修正1回に翻訳つきで応え、PNG書き出し (Figmaの右下Export) で納品します。
設定: 地域の子ども食堂が、活動を知ってもらい寄付と見学を増やすための1ページサイトを作りたがっています。納品物はスマホ版 + PC版のカンプです。相手は「派手なのは苦手。怪しく見えないことが一番大事」と言っています。
設定: 雑貨店の冬のセール (12月1日〜25日・全品2割引き) を、SNS正方形 (1080 × 1080)・Webバナー横長 (728 × 90)・ストーリー縦長 (1080 × 1920) の3サイズで展開します。同じデザインルールで、形の違う3枚をそろえる ― 反復の卒業試験です。ヒアリングの質問づくりから、自分だけで回してみましょう。
案件ごとに「うまくいったこと・詰まったこと・次はこうすること」を3行ずつ書きます。この9行は、ユニット6でポートフォリオの「制作の物語」の材料になります。
つまずきやすいポイント
発展チャレンジ (余力のある方へ)
- 案件1のチラシを、実際に紙へ印刷してみましょう。画面と紙では色も文字サイズも印象が変わります。その差を観察ノートに記録すれば、印刷物にも強いデザイナーへの一歩です。
- 「見積もり」を体験してみましょう。案件3にかかった時間を記録して、「時給1,200円なら、いくらの仕事だったか」を計算します。在宅ワークの値づけ感覚の練習です。
- クラウドソーシングのサイトで「バナー制作」の実案件の募集文を3つ読み、ヒアリングシートのどの項目が書かれていて、どれが書かれていないかを分析してみましょう。